無農薬にこだわった本格米焼酎「若造(わかぞう)」は多くの紹介をいただいております。
木枯らしが吹き渡る若宮町原田の水田地帯。近くの農業、小川内一広さん(28)が田んぼのあぜで、手に取った土の感触を確かめていた。乾いているかに見えた土は、しっとりと湿り気を帯び、ホクホクとした生命観を感じ取ることができた。
農薬や化学肥料を一切使わない有機栽培のコメづくりに取り組んでいる。昨年は、そのコメで仲間と一緒に焼酎「若造」を造り、販売した。犬鳴山系の伏流水と、肥えた大地から生まれるコメを凝縮した若造。「これを売り出し、町の自然を全国にアピールしたい。そして受け継いできた田畑を次代に渡したい」と力を込める。
卒業後、コメの無農薬栽培などに取り組む「九州環境保全型農業協同組合」に参加し、九州各地の農家約100人が実践する農薬や化学肥料を使わない農法を、つぶさに見てきた。
化学肥料をまいて大量生産し、農薬で虫や病気の発生を抑え、除草剤も使うと、コメは案外、簡単にできてしまう。「でも、大切な土壌や水質を少しずつ蝕んでいくんです。化学肥料を使う土は乾燥してがちがちになり、水を含むと、どろどろになって流れ出すんです。」土が死んでいるのだそうだ。そういえば、経済の高度成長と軌を一にして水田地帯からメダカや虫が姿を消していった気がする。
実家に戻って親と一緒に農業をしだして4年になる。学んできた知識と信念を実践に移しつつある今、こだわっているのが自家製の「ボカシ」作りだ。微生物を繁殖させた土壌改良剤で、病害を抑制する放線菌を増やす働きをしてくれる。
米ぬかと油かす、もみぬか、コウモリのふん、おからに、すりつぶしたカニやカキの殻を入れ、土着菌が付着した落ち葉を混ぜ合わせる。まだ、試行錯誤の段階だが、冷たいボカシが2、3日すると温かくなり、1週間ほどで60度にもなる。
それを田んぼにまいてトラクターですき込むと、翌朝、菌糸が張って田んぼが、うっすらと白くなる。「この微生物の力が土を肥やしてくれるんです。柔らかいが、しっかりした土になる。まるで土が生きている感じになります。」
若造で地域おこし
焼酎作りに挑んだのは、若宮町と宮田町の若手農業者8人でつくる「若宮・宮田4Hクラブ」だ。一昨年末、小川内さんの田んぼで採れた約300キロの白米を熊本県内の酒造所に持ち込んだ。昨年4月に650本の「若造」ができあがり、地元で売り出すとすぐに完売した。
2度目になる今冬は、代表を務める安田久雄さん(29)が600キロの白米を持参した。2月に両町が合併して宮若市になることから、昨年の倍の約1300本を販売するつもりだ。
ラベルには「祝 宮若市」の文字と市章を入れる。すでに両町の酒屋や旅館、スナックなどを回って販路の拡大に努めている。安田さんは「新市の新しい特産品にしたい」と夢を広げる。
豊潤な若宮の土壌から生まれた米が、焼酎に生まれ変わった。「若造」を両町民が酌み交わし、心を一つにして将来を語るとき、新たな人のつながりと、明日につながる地域づくりのアイデアが生まれてくることだろう。
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